年頭の緒言
2019年1月9日 | PREDATAスタッフ
新年を迎えるにあたり、Predataは、2018年のトレンドの調査に基づいて、2019年に追跡すべき最も重要な事柄をご紹介する。
休戦にもかかわらず、米中貿易戦争は継続する見込み
エスカレートする米中貿易戦争に対する懸念は2018年、米国経済を付いて回る問題となった。G20に出席中の12月1日に首脳会談で合意された一次的な休戦により、トランプ大統領と習主席は3月1日までに新たな合意に達することになった。緊張が緩和した現在、米国代表者団は北京で対面交渉にあたっている。
Predataでは、国内の貿易政策、貿易保護措置および継続する貿易戦争で中核的な役割を担う主要人物やテーマに関する英語と中国語のウェブページからのメタデータをトラッキングしている。貿易のオブザーバーがこれらのページにアクセスすると、問題の深刻化に対する彼らの未発言の懸念内容が明らかになる。下のグラフが示すように、Predataは2018年に、これらのページでのアクティビティが活発になったのは、緊迫化が進んだ期間や否定的な措置が講じられた時のみであることを発見した。報道価値があるものの否定的ではないその他の発展は、このシグナルの有意な上昇にはつながらなかった。そのため、休戦の発表により多くの人が安堵のため息をついたが、実際にインターネットでは、激化の特徴に類似する反応が認められた。休戦状態が維持されると観察者たちが見込んでいたならば、このシグナルは低レベルのままになっていたであろう。
デジタル領域でのこの反応は、両国が3月までに合意に達するという期待とは裏腹に、先行きは暗いことを示している。少なくともインターネットでは、この貿易戦争が継続すると考えられているようだ。
インターネットは米国株式市場の大きな変動が継続すると予想
2018年、米国の株式市場にはすさまじい勢いで乱高下が戻ってきたが、市場観察者のオンラインのアクティビティはしばしば、激しい売りによる相場の急落を予示していた。下のグラフが示すように、ダウ指数の予期しない下落は、過去の株式市場の大暴落と乱高下イベントに関連するウェブページへの関心度の急上昇のパターンと一致していた。
このシグナルの大幅な上昇は、相対的な市場不安定状態の期間に認められたものであり、その理由はともあれ、インターネットユーザーは、その閲覧パターンを見る限り、差し迫る市場の下降の可能性に対する懸念をより明確に表明していたと言えそうだ。しかし、ダウ指数は乱高下を複数回繰り返したにもかかわらず、10月以来このシグナルは比較的低いレベルにとどまっていた。これは、その体制がシフトしており、オンラインの観察者の間では、2019年を迎えるにあたって株式市場の乱高下が新たな常態となっている可能性があることを示している。
ブレグジットの展望:3つの要素
Predataのブレグジットシグナルは、英国のEU離脱交渉をめぐる特定の論点の特徴や、さまざまな派閥が発信するメッセージに対する共感度をモニタリングしている。ここで、2018年から得られた一部の知見と、この先見込むことができる展開について紹介しよう。
在留推進派を過小評価すべきではない。 2018年は、声高な離脱派が報道の見出しや論評ページを支配することが多かったが、強硬的な在留派も活発であり、ソーシャルメディアやコラボラティブメディアでも高レベルの関心を集めていた。彼らの努力が2回目の国民投票につながらないとしても、政治勢力として彼らは強い存在力を誇るため、1月15日の投票では、テリーザ・メイ首相が提示する離脱協定案が彼女を両側から包囲する議会によって否決される可能性がある。
欧州の人々も注目。 下のグラフが示すように、欧州のインターネットユーザーは、以前にも増してブレグジットを注視するようになってきている。これは、テリーザ・メイ首相に対しEUがより柔軟な姿勢をとる用意があるかについて、2つのシナリオのいずれかが該当する可能性があることを意味している。1) 注目度が高まる中、EU加盟国政府が英国に対し譲歩する可能性はより低くなる。または 2) 欧州各国は合意なしブレグジットの可能性とそれがもたらす影響を認識し、それらについて懸念するようになる可能性がある。
北アイルランドの国境をめぐる問題はなくならない。 この件についてのオンラインアクティビティの測定によると、北アイルランドの国境問題は依然としてブレグジットをめぐる議論で最も重要な問題点である。EUの懸念は、北アイルランドの開かれた国境が英国の国内市場への裏口となる可能性があるという点である。離脱推進派もこの裏口のことを懸念しているが、彼らにとっての主な懸念点は、英国がEUの規制制度から抜け出せなくなるという点である。その結果、国境は依然としてブレグジットの展開に最も敏感な政策課題となっている。この件に対する関心度の顕著な高まりは、英国政府の交渉における不利な出来事に付随する傾向があった。
プーチンは牽制を目指すが、ロシア・ウクライナ間の緊張関係は緊迫化
2018年は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領にとって不安な出来事がいくつもある年だった。退職年齢を引き上げる試みは大規模デモのきっかけとなり、クレムリン支持派の候補者数人が地方選挙で落選するほか、プーチン氏の支持率も2014年以来最低の水準に下がったが、これは部分的には、継続的な景気低迷によるものである。一部の解説者は、昨年末のアゾフ海でのロシアによるウクライナ海軍船の拿捕は、国内の支持率上昇を狙った試みだったと推測した。
2019年、クレムリンは、ロシア国民の関心を国内問題から逸らせる目的で、ウクライナに対する管理体制をさらに強化する可能性がある。2018年末、ロシアは、特別経済措置の対象となるウクライナ人のリストを拡張したほか、主にウクライナからの物品や農産品、工業製品に対し5億ドルにおよぶ禁輸措置を適用した。こうした動きは既存の制裁を拡張すると同時に、部分的にはキエフによるモスクワに対する同様の制裁措置拡張に対抗するものであったが、それにはロシア語を使用するオンラインのオーディエンスもかなりの度合いで共鳴した。下のシグナルが示すように、制裁に関するウェブページでのロシア人の関心は、同年で最高の水準に急上昇した。
過去においては、クリミア併合のような国際的侵略行為は、プーチン大統領の国内の支持率強化につながった。彼は2019年も同じ展開になることに賭けているのかもしれない。
イランのミサイル計画は早期の紛争の火種となる可能性あり
2018年にトランプ大統領は、イランとの核合意から米国を離脱させた他、特にマイク・ポンペオ国務長官や国家安全保障問題担当のジョン・ボルトン大統領補佐官といったタカ派の国家安全保障高官を任命した。エスカレートする緊張関係の焦点となったのは、このイスラム共和国の弾道ミサイル計画だった。この1年を通じてイランはミサイル実験を実施し、米国はそれに対し大反発した。2019年となった今年、二国間で戦争が勃発する可能性はごくわずかであるように感じられるが、イランに対する軍事行動に踏み切る戦争事由がイスラエルまたは米国に生じた場合、それはこの弾道ミサイル計画以外にはあるまい。
Predataの機械学習アルゴリズムは、イランが弾道ミサイルの実験を行うまたはそれが公表される前に発生する傾向があるオンラインアクティビティのパターンを特定した。下のグラフが示すように、シグナルとして表されたこのパターンは、これらの弾道ミサイル実験が行われた数日または数週間前に急上昇していたことがわかる。
2019に向けて、このシグナルは著しく上昇している。これは、近い将来にテヘランから挑発的な行動がある可能性があることを意味している。年始にニュースで大きく扱われるトピックは他にもあるが、ミサイル計画をめぐる米国・イラン間の対決関係が2019年の初期に著しく悪化する可能性がある。